てんちょのお気に入り☆ 佐々木譲さんをたどる

わたくし「てんちょ」の好きなものを、ただただ紹介するブログです

5.『真夜中の遠い彼方』

“新宿歌舞伎町 真夜中の少し前。

  ふたりの人生が、この街で交錯した”

 

1984年11月30日 大和書房

1987年  3月25日 集英社文庫

1992年  3月  5日 天山文庫

「新宿のありふれた夜」に改題



 

個人的に、初期の佐々木作品の中でイチオシの作品です!

歌舞伎町で営んでいた店『カシュカシュ』を畳もうとした郷田克彦。そんな夜、店に逃げるように飛び込んできたベトナム人のメイ・リン。彼女らヤクザの組長を撃ち、追っ手から逃げてきたところだった。

その姿と事情に、克彦はかつて新宿に逃げ込んできた自分を重ねるのでした。

 

警察とヤクザの包囲網をすり抜け、メイ・リンを無事に逃がすことができるのか?

偽造パスポートや不法入国・滞在。

1980年代にはまだ密かに行われていたことが、現在では“ありふれた”こととして捉えられている。「新宿のありふれた夜」への改題は時代をとらえたものでした。

 

メイ・リンを救おうとするなかで、克彦自身も新宿に縛られ抜け出せないことに気付き、そしてふたりは…。

メイ・リンの逃亡劇を助ける『カシュカシュ』の常連客のふたりにも注目です!

 

ちなみにこの作品は「われに撃つ用意あり」というタイトルで映像かもされています。主演は原田芳夫・桃井かおりです。

 

4.『死の色の封印』

 

“洋館を覆う恐慌の影… 80年前の惨劇を暴け!”

1984年6月         徳間書店

1989年6月15日 徳間文庫

 

佐々木譲さん初のホラー小説です。

バイク・冒険・歴史・警察小説のイメージを強く持たれている方には意外かもしれませんが、佐々木さんはホラー作品を何作も発表しています。その第一弾が本書。

 

新藤恭介は、故なき醜聞で東京の大学を追われ、妻子とともに札幌郊外の私立大学に新たな職を求めた。80年前に教頭を務めていた米国人ベーカーが建てた館に住むことになった一家を恐怖が襲う!

怪しい人影が窓に映り、高窓が落ち、妻は地下室に閉じ込められた。

 

あまりにも記録が少なく、大学関係者も多くを語ろうとしないベーカーの研究業績に光を当てようと、資料の収集を始めた恭介に、調査はやめるようにとの大学からの圧力がかかる!なぜベーカーのことを隠そうとするのか!?ベーカーの秘められた過去とは?

 

古い洋館や、家族を襲う恐怖など、ホラーの要素も満載ですが、私個人的にはベーカー一家の過去と、それを知った恭介の変化がとても印象的でした。その変化を、恭介の妻と娘は正反対に捉えます。妻は“ベーカーにとり憑かれている”と。娘は逆に父への敬慕の念を膨らませていく。

 

最後に明かされるベーカー一家の過去。

そして新藤一家にも同じような悲劇が襲おうとする…。

 

佐々木さんのホラー小説を読んだことのない方、ぜひ読まれてはいかがでしょうか?

ただの“怪談”ではない、切ない物語です。

3.『あこがれは上海クルーズ』

 

“ぼくはいつも 君を見ていた”

1984年4月15日 集英社コバルト文庫

1997年9月30日 集英社

 

主人公の“ぼく”高城祐二は、幼い頃から“観察者”の位置に身を置くことを習い性としてきた。大学の演劇研究会に入部したとき、この立場からの脱出を試みたが、芝居の才能はないらしく、結局観客に戻った。

24歳になった“ぼく”は、小さな地下劇場の前で、17歳の奈美と出会った…。

奈美も女優を志願し、いつかスターとして上海クルーズに行くことを夢見ていた。

奈美の成長・迷い・悩みを、やはり“観察者”として見守っていく“ぼく”だが…

 

スクエアな勤め人のぼくと、若くて夢見がちで、毎日を楽しもうとしている奈美。

奈美の変化・成長を羨みながらも、なかなか殻を破れないぼく。

奈美の女優への夢は叶うのか!?

そしてぼくは、“観察者”の立場から脱却できるのか!?

 

 

今ではコバルト文庫版を入手するのは古本屋を巡っても難しく、集英社から出版された単行本もなかなか見つかりません。

どちらの版でも、この本に巡り会えたらとても幸運だと思います。

ちなみに、このお話の続編?(スピンオフ的)として、のちに「ステージドアに踏み出せば」が刊行されています。

「あこがれは~」から時が経ち、大人として成長した“ぼく”高城祐二も登場します。

ぜひこちらも読んでみてください☆

2.『振り返れば地平線』

 

「振り返れば地平線」

“8月16日、開陽台で満月が待っている”

 

1982年  9月25日 CBSソニー出版

1986年10月25日 集英社文庫

 

佐々木譲さんの長編第一作です。デビュー作に続いてバイク小説です。

舞台は北海道。

6年前、喫茶モンテッサに集まっていた若いバイク乗りたちが、名ばかりのチーム「モンテッサ・ツーリング・クラブ(MTC )」を結成し、

“いつか開陽台で満月を見よう”と誓い合う。

6年経ったある日、モンテッサに貼られた手紙を見て、東京で勤め人をしていた久志も北海道へと向かう。

苫小牧で会えたのはMTCの慎平ひとりだった。慎平は仕事を辞めてくるほどこのツーリングに賭けていた。多くの仲間が来ていないことに失望しながらも久志は慎平と北海道ツーリングを始める。途中、女ライダー涼子も加わり、約束の開陽台へと向かう。

3人を開陽台で待つものは!?

 

佐々木譲さんのバイク小説では、いつも“風”が登場します。

苫小牧に着いたときに久志が感じた“風”。

ツーリング中にライダーたちを包む“風”。

本作の“続編”とも言われる「いつか風が見ていた」も、“風”がとても重要な要素でもあります。

“仲間は開陽台に集まってくるだろうか”という不安、途中の改造セリカとのバトルや涼子に伸びる魔の手、涼子をめぐる恋模様…。

広大な北海道で、様々なドラマが繰り広げられます。

 

好きなのは、やはりエンディング。

仕事のため、東京に戻らないといけない久志と、このまま北海道ツーリングを続けようという慎平・涼子。久志が抱える葛藤と、最後に下す決断が見物です!

 

1.『鉄騎兵、跳んだ』

 

鉄騎兵、跳んだ」

“こいつは鉄の暴れ馬に跨がるロデオだ!”

 

1980年8月10日 文藝春秋

1986年5月15日 徳間文庫

2010年5月10日 文春文庫

◯「鉄騎兵、跳んだ」

◯「246グランプリ」

◯「パッシング・ポイント」

◯「ロウアウト」

◯「雪辱戦」

◯「スコアブック」

 

今や、冒険小説・歴史小説・警察小説で名高い直木賞作家・佐々木譲さんのデビュー作です。本田技研在籍中に執筆し、第55回オール読物新人賞を受賞した作品です。

6編の短編で構成されています。

 

◯「鉄騎兵、跳んだ」

表題作は、モトクロスを題材にしたバイク小説。モトクロスに人生のすべてを賭ける貞二は、23歳まで3年かかってもシニアレースに上がれないでいる。また、突如現れた新人天才ライダー・根本の出現に焦りを覚える。愛する洋子の目を自分に向けさせるためにも、引退を決意して最後のレースに臨む…!

 

まず感じるのが、佐々木譲さんの“バイク愛”。本田技研にいらしたこともあり、以後の作品にも多くのバイクが登場します。佐々木さん曰く、「バイクそのものではなく、バイクを取り巻く人々のことを描きたい」。

まさにこの小説も、バイクそのものよりも、バイクを愛する人たちの物語です。

何より引き立つのはヒロイン・洋子の存在。

焦る貞二の横で、新人ライダー根本のことを誉めちぎりながらも、「貞二は貞二でしょ」「貞二はまるで鉄騎兵みたいね」と、貞二への想いもしっかりと伝えてくれる。

 

さぁ、貞二の最後の勝負の決着はいかに!?

“勝ち負け”を超えるものが、ゴールラインで待っています!

 

この他の短編も、多くはバイク(または車)を題材にした物語。唯一、文春文庫には収録されなかった「スコアブック」は、バイク小説ではありませんが、どの短編も(佐々木さんの短編はいつもそうですが)爽やかな、時には切ない読後感に包まれます。

 

直木賞作家・佐々木譲さんの原点となる作品を、一度読んでみてはいかがでしょうか?

 

追記

鉄騎兵、跳んだ」は、1980年ににっかつ劇場用映画として、石田純一さん主演で映画化されています。残念ながらDVD化はされておらず、VHSのみとなっています。

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たくさんの趣味がありまして、それを多くの方と共有できたらいいな、と考えています。

ちなみに、
好きな作家・<b>佐々木譲</b>
好きなアーティスト・<b>MONKEY MAJIK</b>
好きな人物・<b>坂本龍馬</b>
好きなこと・<b>読書、映画鑑賞、折り紙手芸、フリマアプリ</b>
他にもいろいろありますが、まずはじめは、<b>大好きな作家・佐々木譲さん(の作品)</b>について紹介していこうと考えています。

共通の趣味をお持ちの方にたくさん出逢えたらいいな、と思っています。
よろしくお願いします☆